歯科衛生士とは
食べたいものを、おいしいと食べられることは幸せです。口のなかが健康だから、おいしいと感じられる。もし口のなかが不健康だったら、好きなものも食べづらくなり、人生が楽しくなくなるかもしれません。そんなお口の健康について考え、守る。歯科衛生士は、「生活を支える医療」の担い手であり、DENTAL HYGIENIST(デンタルハイジニスト)と呼ばれるお口の健康の女神といえます。
歯科衛生士マンガのご紹介

歯科衛生士の仕事
多方面から求められる口腔ケアのスペシャリスト!
歯科衛生士には、大きく分けて「歯科予防処置」「歯科診療補助」「歯科保健指導」の3種類の仕事があり、「歯科衛生士法」という法律に基づき、国家試験によって定められた資格を持つ事で就業する事ができます。
歯科助手とは異なり、直接患者さんの口腔内に触れて処置を行なう事ができます。
歯周病や虫歯にならないための処置をします
虫歯にならないように、歯の表面にフッ化物を塗布します。歯の溝や治療した所に樹脂の詰め物をします。歯周病にならないよう、歯垢や歯石を専用の道具(スケーラー)で取り除いたり、さまざまな食べ物や飲み物で着色してしまった歯を白くしたりします。
~歯科医院は虫歯になる前にメンテナンスする場所へと変わりつつあります~

歯科医師の指示で歯科診療の補助をします
診療の前に、患者さんのお口の中や歯の状態を把握し準備をします。また、必要であればX線を撮影する準備をします。歯科医師の傍らで、歯の削りかす や唾液をバキュームで吸い取り診療がスムーズに行われるよう手助けをします。さらに、歯に詰めた金属や樹脂などの研磨もします。

診療室や学校、職場での歯磨き指導や歯科保健指導をします
歯やお口の機能や役割とともに歯の病気の予防や磨き方を教えます。また、喫煙と歯周病の関連について注意を促し、メタボリックシンドロームにならないよう支援します。さらに、高齢者や要介護者のお口の健康指導やケアも行います。

7 つの診療分野の特徴
小児歯科 | フッ素塗布やシーラント、食事指導など予防が基本の分野。TBI、MFTなど、診療の中心は歯科衛生士が担います。保護者とのコミュニケーションも重要で、育児経験を活かして活躍している先輩も多くいます。 |
一般歯科 | いわゆる「かかりつけ医」として、地域に根ざした診療を行う分野。患者層が幅広いため、定期健診、歯周病治療、診療補助、患者さまと歯科医師の橋渡しなど歯科衛生士の役割は、多岐にわたります。 |
矯正歯科 | 見た目を整えることに加え、正しい嚙み合わせや口腔清掃をしやすくする観点からも重要な分野。余裕をもって予約を取る方が多いことから、患者さまとじっくり向き合えることも魅力。未経験からスタートした先輩も活躍しています。 |
口腔外科 | 親知らずの抜歯や顎関節症の治療、スポーツ事故による外傷の処置など、口腔に幅広く対応する分野。手術のアシスタントや手術前後の口腔管理などに加え、インプラントを手掛ける歯科医院では歯周病治療にも携わります。 |
審美歯科 | ホワイトニングや被せ物を白くする治療など、「よりキレイになりたい」という思いを叶える分野。コンプレックスが解消されて自分に自信が持てた、という患者さまも多く、「心の健康」にも深く関わっています。 |
予防歯科 | 歯科衛生士が主体的に行え、本来の力を存分に発揮できる分野。一人の患者さまを同じ歯科衛生士が担当する「患者担当制」や、予防専用のフロア・ユニットを導入している歯科医院もあります。 |
訪問歯科 | 高齢化に伴いニーズが高まっている分野。口腔の清掃や治療のアシストが主な役割で、嚥下リハビリに携わることも。やりがいや将来性に加え、限られた時間でも働きやすく、ライフスタイルにあわせて活躍できることも魅力です。 |
これからの歯科衛生士の役割
世界でも経験したことのない急激な高齢化が進む日本で、身体が不自由なため、歯科医院に通うことのできない患者さんが増えています。また、死亡原因を考えると、上位に挙げられる肺炎ですが、その中の多くは食べ物や飲み物をうまく飲み込めないことが原因でおこる「誤嚥性肺炎」です。しかし、これは専門的な処置によって予防でき、正しく機能させることによって食べ物を美味しく食べ、体力もアップします。今後歯科の位置づけは、「全身の健康やQOL(生活の質)との関係に基づく専門的口腔ケア」や「食べる・話すといった生活の中の口腔機能」の目線から専門性を発揮し、高齢者を支援する「生活を支える医療」となってきています。
在宅及び入院患者への歯科診療と口腔ケア
口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防や摂食嚥下機能の向上にとても有効と介護の現場で重要視され、今後活躍が期待されています。歯科衛生士は介護職員が入所者に対し効率的な口腔ケアを行うことができるよう指導し、評価する「口腔ケアマネジメント」の役割を担います。
チーム医療の一員
医療関係職種をチーム医療の一員として、基本的医療の一つである栄養管理を、症例個々や各疾患治療に応じて実施するNST(栄養サポートチーム)。
また口腔の衛生管理の徹底を図ることで誤嚥性肺炎等の発症を防止し、摂食・嚥下障害、口臭等に対する専門的なケアをおこない、入院患者のQOL(生活の質)向上や早期回復に貢献します。
歯科衛生士は活躍の場が広い
むし歯や歯周病のトラブルを予防し、口の中の健康を支える国家資格を持つ医療専門職で、結婚・出産後でも再就職しやすく、収入も安定しています。
歯科衛生士の就業場所は歯科診療施設の他に、病院や市町村、歯科衛生士学校、保健所、事業所、介護老人保健施設など多岐にわたります。
現在、歯科医療は治療より予防に重点を置くようになりました。超高齢社会を迎えて、保健指導、高齢の方の口の清掃やケアなどを担う歯科衛生士の需要も高まっており、歯科衛生士の活躍の場はますます広がっています。
年代別にみた歯科衛生士

現在、歯科衛生士とは歯科診療施設にいる若い女性というイメージが強く持たれているようです。しかし、上記のグラフで示したように全国の統計調査の結果、30歳以上の歯科衛生士の割合が増えています。これは従来以上に、臨床経験の豊富な歯科衛生士が求められているからです。歯科衛生士は、生涯活躍できる仕事です。
医療としての歯科
私たちの口の中には、500種を超える細菌が百億から数千億も住み着いています。そのうえ、お口の清掃が悪いと細菌は1兆個近くになってしまいます。
口腔内の細菌は、私たちの出す唾液や歯の周りから滲みでてくる成分を主な栄養源として、歯の表面、歯の周り、唾液、舌、頬の内側、咽頭などで住み家を作っています。むし歯の原因となる細菌は、お口に砂糖が入るとねばねばしたデンタルプラークとなり酸を作って歯を溶かすようになります。それは塊となっているため、私たちの免疫力に抵抗し、抗菌剤もうまく作用しません。

歯周病などになってしまうと、歯周ポケットという細菌の格好の住み家ができてしまいます。住み着いた細菌は、口臭の原因になるだけでなく、全身の健康を害する病原性も持っています。すなわち、肺炎、心内膜炎などの心臓病、動脈硬化、糖尿病、骨粗鬆症、妊娠トラブルの原因となることが証明されています。また、口の病気を放置しておくと、腎臓、関節、皮膚などが思わぬ病気になってしまいます。
口の病気を治せば、糖尿病の症状が改善されたり、原因不明の肩こりや微熱がとれたりすることもはっきりしてきました。原因がよくわからない病気の時に、「歯科医師に口の病気を調べてもらってください」と、内科のお医者さんが勧めるようになってきました。歯周病などは、自覚症状がないまま手遅れになる 怖い病気です。予防と早期発見が重要です。

これらの、歯周病菌のいたずらから私たちの健康を守るのが、「歯科衛生士」です。超高齢社会でますますその役割が重要視され、特に口腔ケアの重要性が高まっています。まさに健康ライフのパートナーとも言えるのが「歯科衛生士」なのです。